【空間デザイン心理士プロ4期課題】ルリマツリチーム

空間デザイン心理士プロ4期課題ルリマツリチーム

空間デザイン心理士®プロ 4期課題ルリマツリチーム

2021.12.21

藤村泰子
鈴木アラブギャリ君枝
福田章子
特別協力:0期 村田由美子

目次

物件概要

場所青森市
用途建築設計事務所兼イベントスペース「クーレ(癒し)」
規模62.5㎡
建物2階建て店舗付住宅の1階部分を賃貸で借りる。
元は理容室。2階に大家さんが暮らす。
クライアント三上恵さん「グレイズ建築」代表 / 建築士

シングルマザーや低所得者向けの安心できる大好きな基地(家)をつくるお手伝いをしたいと、青森でご活躍されている建築士さんです。「その本拠地になるよう、この物件を改装したい」と改装工事が始まっている中、空間デザイン心理学®にご興味をもってくださり、ご提案させていただくことになりました。
必要なスペース・自身やスタッフが事務所として使うオフィス
・顧客との打ち合わせの場
・子どもが遊べるキッズスペース
・ママが出逢い憩える場所
・エステやネイルの貸サロンスペース
グレイズ建築ロゴ

立地

  • 積雪180cm(12月初旬~3月中旬)
  • 夏の湿度は低く、冬は西風が強い
  • 公共交通機関での移動は難しい地区もある
  • 移動はほぼ車
  • 徒歩5分の場所に青森市内最大のイオン系ショッピングモール
  • 車専用道路橋の側道沿い
立地条件
跨線橋から物件をみる

跨線橋から物件をみる

道の向いから物件をみる

道の向いから物件をみる 中央の建物が当物件

隣地前歩道から物件をみる

隣地前歩道から物件をみる

ショッピングモール方面から跨線橋をみる

ショッピングモール方面から跨線橋をみる

幹線道路はさんで向いの中古車販売店~跨線橋をみる
幹線道路はさんで向いの中古車販売店~跨線橋をみる

幹線道路はさんで向いの中古車販売店~跨線橋をみる

クライアントのニーズ

空間デザイン心理学®では、まずクライアントの深いニーズを引き出し、それを叶える空間を考えていきます。

LDNメソッド®を使って、クライアントの恵さんの「理想の基地」のニーズをヒアリングしました。
その結果、下図のようなチャート図が得られました。
このチャート図は、クライアントが本当に実現したい「深層ニーズ」とその「実現法」が示されています。

ネットワーク図「理想の基地」
LDNメソッド®を使ったヒアリング結果のチャート図

ヒアリングの結果、クライアントの恵さんが「理想の基地」で感じたい感情は、下記の3つであることがわかりました。

クライアント(恵さん)が大切にしたい感情ニーズ

「わくわく」「安心」「希望」

恵さんがこの場所で「大切な感情を感じるために必要なこと」も下記の通り引き出すことができました。
恵さんがこの場所で、大切にしたい感情を感じられるように、空間づくりをプランして提案していきます。

クライアント(恵さん)のゴール:「安心してずっと過ごせる本拠地」

日々の生活に追われているママたちが、普段できないような体験ができて癒され、仲間を見つけて憩える、ママと子どものサードプレイス。

●恵さんが「安心」を感じるために必要なことは、

  • まるで自然の森の中で遊ぶようなプレイスペース、子供が一人でこもることができるテントや安心できる胎内のような場がある。
  • 整理整頓されシンプルで考えがまとまり落ち着けること。
  • 楽しそうな場所で普段できない体験や日常と違う仲間ができることで、子どもに優しくなれ自己肯定できること。
    誰かの幸せに役立つこと。


●恵さんが「希望」を感じるために必要なことは、

  • 広すぎないアットホームな雰囲気で、自分だけでなくスタッフが寛げ充実感や存在感を感じて満足できること。


●恵さんが「わくわく」を感じるために必要なことは

  • 森の中のような人工物ではない場所で過ごし、考えるのではなく感じること。

クライアントの個人特性

人によって、環境の敏感さや脳の特性、パーソナリティが違うため、クライアントの個人の特性について診断を行いました。クライアントの恵さんのパーソナリティや脳の使い方、五感の感度などについての特性を診断した結果は下記でした。
これらの個人特性に合うように空間のプランニングを行っていきます。
そうすることで、完成後に「見かけは良いけど居心地が悪い、なんとなく落ち着かない」といったことが、軽減されます。

恵さんの個人の特性
  • 人間の基本ニーズで重要視していること:「不安定感」「愛とつながり」*1
  • 環境に対する敏感さ:視覚・聴覚・触覚のスクリーナー*1
  • ローカスオブコントロール:内的統制*1
  • 性格特性:「開放性」「調和性」が強い*1
  • 五感の優位性:視覚と聴覚優位2

    参考文献
    *1:空間デザイン心理士®テキスト
    *2:空間デザイン心理士®プロテキスト

工事前の状況

現在はすでに改装工事が始まっていましたが、工事前は、道路に面して2つの店舗スペースがあり、壁で仕切られていました。

現状の計画案と解析

わたしたちが関わった時には、すでに下の写真のように改装工事がある程度進んでいた状況でした。

工事中の改装計画は下図の通りでした。このプランには空間デザイン心理学®視点か見ると、いくつか課題がありましたので、わたしたちが考える最善案をご提案することとなりました。

課題:閉塞感や混乱を招く空間で、子どもも大人も癒され、楽しめる場所になっていない
クライアントのニーズの「安心」「希望」「わくわく」が感じにくい

提案プラン

そこで、現状の課題を改善し、恵さんのニーズを満たす理想の基地を考えました。

恵さんとスタッフ、ママと子どもがずっと安心して過ごせるサードプレイス

 日々の生活に追われているママたちが、普段できないような体験ができて癒されたり、仲間をみつけて安心して憩える、恵さんとスタッフとママと子どものサードプレイスです。それぞれが、自分らしく自由に居場所を選んで過ごせ大小さまざまな居場所があり、まるで自然にいるようにリラックスして過ごせる空間です。
 自由にごろごろ寝ころべるソファ、みんなで集えるテーブル、胎内にいるような小さな居場所やほの暗さ、自然素材や色、鳥の声や水音、木々の揺れる音等のBGMによって、リラックスして安心できるとともに、新たなアイデアが思いつくなどしてわくわくする空間になります。

 プレイスペースは森の中にある広場のようで、寝転がれる場所や小テントや木の洞、自分で基地を作れる30cmの積み木型の木箱、みんなで集まれる円形テーブルなどがあります。子どもは小さなスペースにこもったり、広場でみんなと遊んだり、自分の好きな居場所を自由に選んで過ごすことができます。遊んでいる時に、少し不安になっても大丈夫。小部屋にいるママが見えるから、安心して一人でも遊んでいられます。円形テーブルは、年齢に関係なくテーブルを囲んで一緒に時間を楽しむことができます。
 
 事務所とプレイスペースの間は、仕事に集中したい時やプレイルームで過ごす子どもやママたちとつながりたい時など、ニーズに合わせて見えたり見えなかったり、調整できるパネルで仕切られています。

 事務所は、恵さんだけでなくスタッフや来客の方も充実した時間を過ごせるよう、プレイルームと明確に仕切って集中して仕事したり、くつろいだりできるようになっています。広すぎず、気軽に過ごせるアットホームな雰囲気で仕事ができることで、恵さんは満足でき未来に希望を感じられるでしょう。散乱しがちなカタログや物がすっきりと壁面におさまってシンプルな空間になっていれば、頭がすっきりと整理され考えがまとまり落ち着き、安心できます。

 この場所で安心して楽しい時間を過ごせれば、ママは子どもにもっと優しくなれますし、そんなママと子どもたちを見る時、恵さんは救われた気持ちになり、安心や希望、わくわくを感じることができるでしょう。

提案プラン

エントランス

エントランス
  • エントランスドアは透明ガラスの引き戸➡開放性を出す
  • ママと子どもが身支度ができる広さ➡落ち着いてできるように
  • 土間にベビーカー置き場
  • 冬場、雪を室内に持ち込まないためのコート掛け(ステンレスバー)➡無意識に行動を誘導
  • 子どもが自分で靴をしまえる窓下靴箱➡子どもの自然な片付け行動をうながす
  • プレイスペースへのドアに大小の丸窓➡のぞきたくなる、行ってみたい!という期待感を感じさせる

プレイスペース

プレイスペース
プレイスペース
  • 窓を大きくし自然光が入るように➡人は明るいところに集まる
  • 大中小テント+円形ラグマット➡主体的に好きな居場所を選べるよう
  • 30cm木箱: 多目的に使える椅子・机・展示台➡自分の居場所を選んだり、積み木の様に自分でつくることができる
  • シンボルツリー:木の中に籠れる空間➡安心を感じられる
  • こどももママも一緒に囲める切り株テーブルとキノコ椅子➡自由な過ごし方ができ、会話が弾む距離感
プレイスペース
  • 木陰の絵本コーナー➡安心やわくわくを感じる
  • アースカラ―➡こどもの緊張をゆるめる
  • 暗くなると光る蓄光塗料で星と夜空を描いた壁紙(昼と夜で雰囲気が変化)➡わくわく感
  • ママのための商品のディスプレイ壁➡大人の目線高さで見やすい
PHOTOWALL/Forest Pathway
(e319154)

レストルーム

レストルーム
  • ママと子どもが一緒に入れる広さ➡安心
  • 子どもの「自分でやる」を尊重する➡自立心の育成
  • 便器脇の袖壁➡安心
  • プレイスペースとの間に壁➡安心
  • 床:クッションフロア(淡グレーベージュ)
  • 壁:漆喰(ベージュ系)➡自然素材・緊張をとく
  • アクセント壁:杉板・観葉植物➡自然素材で緊張をとく
  • 便器・洗面ボウル:白➡清潔感のある色
  • 洗面台上部正面に鏡
  • おむつ替え台(折り畳み式)

サロンスペース

サロンスペース
  • ママの癒しスペース:アロマ、ネイル、カウンセリング等の貸室として➡新たな出逢いとママの仕事の可能性づくり
  • サロンとプレイスペースとの間に窓(場合に応じてカーテン使用)➡こどもとママが見える、安心
  • プレイスペースとの間にゲート➡期待感、安心
  • 床:低温乾燥の杉材➡触感でリラックス、柔らかい素材だから転んでも安全で温かい
  • 壁:漆喰➡自然素材・深呼吸できる空気に
  • アクセントクロス:葉の模様➡リラックス効果
  • カーテン:リネン➡自然素材でリラックス

事務所スペース

事務所スペース
  • スタッフが安心できる空間に➡二次テリトリー確保
  • プレイスペースとの間仕切り壁は腰上を柱・筋交を見せ、透明パネルで挟み込む➡開放感を出す、打ち合わせ中のままと子どもがお互いを見れる安心感
  • 透明パネルは、見られたくない時には曇りガラスに切り替えできる液晶調光フィルム(凸版印刷)採用、プロジェクター映写も可能➡安心、集中できる場にもなる 
不透明時→透明時
  • エントランスとの間は開閉可能窓➡自然光が入る明るい場所だと行きたくなる
事務所スペース
  • 天然木のバーカウンター(キッチン脇作業台にもなる)・飾り棚
  • 丸太のハイスツール➡ちょい掛け、物を置く行動をうながす
  • 造り付けソファベンチは収納で縁取り、間接照明取り付け➡囲まれた空間で安心感
  • ソファ壁面は布のふとん貼り➡触覚でリラックス
  • 大きな打合せテーブル➡親密な会話が生まれやすい座り方ができる
大きな打合せテーブル

収納

収納

視覚情報を減らしつつ、使い勝手良く、必要な収納量をとる

図と地の考え方でシンプルに
  • 引き戸裏に隠されてた冷蔵庫・ミニシンク
  • 事務用品はテーブル下に隠れたワゴン
  • カタログ・サンプル類はソファ周りに

外観

外観
  • ロゴの使用色(木・緑・黄)に合わせる
  • 会社ロゴ➡心理的に目立ち、安定感を感じる
  • 入口脇に「クーレ」看板(開店時は光る) ➡人が注目しやすい仕掛け
  • 板材の横張➡安定感がある
  • シンボルツリーを設置➡ロゴの木と連動させ印象付け
  • オイルタンクカバーも板張に➡目立たせたくない物を消してしまう仕掛け
  • 庇と袖壁の新設➡雨よけ機能とゲート的役割で期待感ふくらむ
  • ポーチをデザイン➡視覚、触覚で誘導
  • 夜は窓から月形照明が見える➡夜間の視認性高める、行ってみたい気持ちにさせる

まとめ

クライアント(恵さん)が大切にしたい感情ニーズ

「安心」「わくわく」「希望」

ゴール「安心してずっと過ごせる本拠地」

日々の生活に追われているママたちが、普段できないような体験ができて癒されたり、仲間をみつけて安心して憩える、恵さんとスタッフとママと子どものサードプレイスです。それぞれが、自分らしく自由に居場所を選んで過ごせ大小さまざまな居場所があり、まるで自然にいるようにリラックスして過ごせる空間です。

まとめ

恵さんやスタッフが「安心」して新しいチャレンジができるための拠点、そこに集まるママやこどもが「わくわく」して「希望」を感じる心の拠り所となるようなサードプレイスが実現します。

ルリマツリチームメンバー

ルリマツリチーム

クライアントのご感想

自分がどうしたいのか細部まで考えられていませんでしたが、(LDNメソッドのヒアリングを受けて)「どうしたい」ということの先に、(満たしたい)感情があることがわかりました。また、聞いたことを言葉にしてまとめたり、自分も気づいていなかった「求めるもの」に気づくことができました。そして、少し客観的な目で見れるようになりました。プレゼンの絵が素晴らしく説得力があり、わかりやすかったです。
友人に紹介するとしたら、「空間デザイン心理学®という素晴らしいヒアリング、提案方法があって、私も学んでみたい。」伝えたいです。

とても勉強になりました。思った以上に得るものが多く、これから、今、建築中の物件に活かしていきます。

間取りが家族のコミュニケーションや人の人格などと直結しているんだなということを知り、納得できました。パースを用いてのプレゼンは見ている方も分かりやすく、イメージがしやすいなと感じました。
(空間デザイン心理学®に基づいた空間提案を受けて)自分自身のことは意外と自分でもわからないんだなと思ったのと、同時にそれを引き出すように聞くことはとても難しく感じました。とてもよい経験をさせていただきました。

こうしたい、ああしたいというざっくりとしたイメージはあっても、それは何でなのか、何を求めているのか、聞き出す能力と、それをかたちとして表現するのは素晴らしいことだなと感じました。

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