家や家具の購入・リフォーム前に必ず知っておくべきこと
夫婦関係は家具の配置で変わる
こんにちは、高原美由紀です。
あなたの家が、ただ素敵で使いやすいというだけでなく、住んでいるうちにあなたの人生まで良くなるとしたら、住まいの価値は計り知れませんよね。大きなお金がかかる家・家具の購入、リフォーム前に必ず知っておきたいことをお伝えします。
まず、下図を見てください。ご夫婦2人と妻の母の3人家族のリビングダイニングです。
このご家族の妻から「ダイニングの椅子が大きすぎて邪魔なので買い替えたい」というご相談がありました。
一般的には、どんな椅子が良いかをうかがい、ご要望に合う椅子を提案することでしょう。
でも、私が行なっているやり方は全く違います。
家庭内でのストレスの原因が、現在の住まいにないかを診ているのです。椅子が大きくて邪魔だから買い換えるというのは、お客様が考える解決策に過ぎないからです。
実際にこの部屋を見た時に、ただ椅子を変えるだけでは、この家の本当の問題は解決しないと感じました。夫婦の会話が少なく、夫は疎外感を、妻は居場所のなさを感じている可能性があることが、間取りや家具配置から推測できたのです。
そこで、私は一つ質問をしました。「奥様はいつもどこに座っていますか?」予想通り、妻はソファの背後にあるダイニングの椅子の左側でした。
「それなら、椅子を買い替えても解決しないと思います。」そうお答えしました。
なぜなら、食事が終わると夫はソファに座り、妻と母はソファ背後にあるダイニングの椅子に2人並んで座っていたからです。つまり、ソファが家族の分断する配置になっていたのです。この配置では、夫婦が食事以外の時間に会話を交わすことはほとんどありませんでした。
さらに、リビングは夫のなわばりとなっており、妻にはキッチンとダイニングの椅子の往復のみで、リビングで自由に過ごせるスペースがありませんでした。妻が夫に話しかけても、そっけない態度で返されることもあり(それもこの家具配置のせいです。)、妻の自己肯定感は低下していました。このような状況から、妻は自分がコントロールできる唯一のものである「椅子」の買い替えを望んでいたのです。
そこで、図Bのようにソファとテレビの位置を反転し、家族が顔を合わせてコミュニケーションを取りやすい配置に変更しました。さらに、読書好きな妻が一人でリラックスできる読書コーナーを設けました。
すると、どうでしょう。相変わらずソファに座る夫とダイニングに座る妻が自然と会話を交わすようになりました。さらに、以前は、妻と妻の母がダイニングで会話していて、夫はその会話の中に入れなかったのですが、この配置なら夫も家族の会話に入ることができるので疎外感がなくなります。その結果、夫は以前よりも妻に対して明らかに優しく接するようになったのです。一方、奥さんは自分だけの居場所を持つことができたので、「自分の好きなことをしていいんだ」ということに自身がOKを出せるようになりました。
数年後に妻に話を聞くと、「夫が優しくなって、夫婦仲がすごく良くなりました。それから、自己肯定感はめちゃくちゃ上がりました!びっくりです!」とおっしゃっていました。
つまり、ソファの向きを変えただけで、夫婦関係や夫の自尊心、妻の自己肯定感まで向上したのです。
このように、家具配置の小さな変更だけでも、家族のコミュニケーションを促し、家庭内の幸福度を高めたというこの事例は、住まいが私たちの行動や心理に与える影響の大きさを示しています。なぜこのようなことが起きるのかといいうと、人の行動は家具の配置や間取りによって意思とは別のところで規定されるからです。たとえ、いくら会話をしようと思っても、部屋が会話しやすいようになっていなければ、かなりの努力が必要ですし、疲れていれば努力もしないでしょう。お互いに顔が見えれば話がはずむ、顔が見えなければ話をしないというのは自然なことですよね。
家・家具購入やリフォームの前に
家や家具の購入、リフォームの前に確認すべきことは、現在ある不満やストレスは、本当に家具の購入やリフォームで解決するのか?ということです。先述の家族のように、もしかしたら、家具を買っても解決しないということもあるかもしれません。ストレスの本当の原因をつきとめることが大切です。しかし、それはなかなか難しいことでもあります。ストレスの渦中にいる本人は気づかないことが多いものだからです。そんな時は、ぜひ、私や空間デザイン心理士®️プロの資格者にご相談いただきたいと思います。
ある程度は自分で見分けて改善することもできます。見分けるための質問はいくつかありますが、まずは下記の2つの質問をしてみてください。
1. 今あるストレスは、家族のコミュニケーションの質や量によって改善する?
2. 今あるストレスは、自分が自由に過ごせる居場所があったら改善する?
もし、上の2つの質問にYESなら、その改善に役立つ「部屋づくりの法則」の一つをご紹介します。それは、視野60度の法則といいます。
視野60度の法則
人は視野60度の範囲にお互いに入っていなければ、自然な会話が生まれにくく、話をしても相手がちゃんと受け取ってくれていると感じにくいのです。だから、同じ空間にいる家族のお互いの顔が視野60度内に入るようにソファやダイニングテーブルを配置しましょう。そうすれば、自然と会話が生まれるだけでなく、話をちゃんと相手が受け取ってくれていると感じられるようになります。
図Bでの変更は、家族が一緒にテレビを観てくつろぐ時に、お互いが視野60度になるように家具の配置を変えたのです。そして、妻が一人でリラックスして読書をする場所は、お互いの視野60度から外れる位置に配したのです。そうすることで、同じ空間でも気にならずに過ごすことができます。
このように、家具の小さな配置変更だけでも、生活の質を大きく向上させる可能性を秘めています。先ほどの家族が、もし椅子を買い替えただけだとしたら、どんな未来が待っていたでしょうか。人生の1/2以上を過ごす住まいが、家族のコミュニケーションの量や質、心の安定に影響します。それだけではありません。そこで暮らす人やそこで育つ子どもの性格や心の状態、習慣にまでも影響するのです。
タレント田村淳さんのご家庭でも良い変化が!
タレントの田村淳さんにアドバイスをしたところ、ダイニングの配置替えをしてくださいました。
そうしたら、
「子どもがご飯を残さず食べるようになった。家族の会話が増えて、妻がいつもにこにこしているようになった!これはすごい変化です。」とのお声を寄せてくださいました。
他にも、「妻が、ごはんできたよ!ごはん!!といつもキツイ口調だったので、ついけんかになっていたのですが、配置替え後は夫婦けんかが激減しました。」など、家族関係が大きく変わったというご報告をたくさんいただいています。
まとめ
部屋は家族の幸せを形作る大切な要素です。
どうしたら家族のコミュニケーションがスムーズになるか、この部屋だとどんな行動や心理になるかを考えることが、真に価値ある住まいづくりではないでしょうか。そのために大切なことは下記です。
・リビングは、60度の法則に従って家具を配置する。
・一人で自由に過ごす居場所を、家族の60度の視野から外した位置に持つ。
どうか、家や家具の購入やリフォーム後に後悔のないように、事前に確認してくださいね。
不安な方は、個別のご相談も承っております。
他の「部屋づくりの法則」については、下記の本に記載していますので、ぜひ手に取ってみてくださいね。
高原美由紀著『ちょっと変えれば人生が変わる!部屋づくりの法則』青春出版