あなたの本当のニーズとは?

こんにちは。高原美由紀です。
皆さんは、住まいやインテリアを決める際に「本当にこれが自分の望むものなの?」と疑問に思ったことはありませんか?部屋やインテリアを決める時、自分や家族が本当に求めていることを明確にして後悔しない選択をするのは、簡単ではありません。
今回は、心理学の視点から「ニーズとは何か?」についてお話しします。
収納があっても片付かない
25年以上前のことです。
あるお客様が「片付かないから、リビングに大きな壁面収納が欲しい」と希望されました。私たちは、ご要望に応じた設計をして、お引渡しの際には「これで片付きます!」ととても喜んでいただけました。しかし、1年後に再訪した際、せっかく作った収納は全く活用されていなくて、部屋は以前と同じように散らかったままでした。それどころか「収納があっても片付けられない」と自分を責めていらしたのです。
この時、「要望をそのまま叶えるだけでは、本当に幸せに暮らせるわけではない」ということを目の当たりにしました。
この出来事をきっかけに、本当のニーズを引き出して、人が幸せに暮らせる空間とは何かを研究し始め、25年の月日をかけて、ニーズをシステマチックに引き出し、視覚化するヒアリング法(LDNメソッド®️)と、ニーズを実現するための方法として空間デザイン心理学®️が生まれました。
本当に叶えたいことは?
研究の結果、「収納が欲しい」「モダンなインテリアにしたい」といった要望は、多くの場合、実際にその人が本当に叶えたいことではなかったのです。
ニーズは、人の意識の中で複数の階層に分かれています。「収納が欲しい」「モダンなインテリアにしたい」といったことは表面的な要望なのです。その下には、必ず本当のニーズが隠れていることがわかりました。
例えば「片付かないから収納が欲しい」という要望を設計者やインテリアコーディネーターに伝えると、多くはその要望を叶えようとしてくれるでしょう。
空間デザイン心理学®︎では、ただ要望を叶えるだけでは、幸せになれないことがわかっているから、そのような要望の叶え方はしません。LDNメソッド®︎というニーズヒアリング法を用いて、ご要望の下にある「本当のニーズ」を引き出して、要望だけでなく、本当のニーズを叶える提案を行なっています。
「片付かないから収納が欲しい。すぐに散らかす夫にイライラして怒ってばかりだから」という方は、実は夫が家事を手伝ってくれず、自分が家政婦のように感じて自己肯定感が落ちている、それをなんとかしたかったのかもしれません。
そうだとすると、片付けの苦手な家庭に、物の住所が決まった収納を作っても、結局片付きません。せっかく収納を作ったのに片付かないと、余計にイライラが増幅するのではないでしょうか。「夫にちゃんと片付けてもらうための収納」を作ったところで、自己肯定感や自信、夫から大切にされているという気持ちが得られるものでもないですよね。
もし、この妻が、夫からいつも大切にされていると十分に感じるなら、多少の散らかりにも目をつぶれるでしょうし、「しょうがないわね」と、自分でさっと片付けたりするかもしれません。
つまり、収納を作るというのは、根本解決にはならない小手先の解決法といえます。
本当のニーズとは、あなたが「満たしたい感情」なのです。
黒い壁のインテリアにしたい
他にもこんな例があります。「SNSで見た部屋が格好良かったから、リビングに黒い壁紙を貼りたい」というご要望です。しかし、LDNメソッド®︎のニーズヒアリングを進めていくと、「トレンドのインテリアを自慢したい」「ミニマムな空間で安心感を得たい」といった気持ちが見えてきました。
トレンドの黒いインテリアは、その方にとってステータスシンボルであり、来客や友人、家族からの評価を得るための手段で、自宅が洗練されていることは、自分のセンスや成功を示す一つの証として自信を満たすものでした。
また、雑多な環境よりも、統一感のあるデザインの方が精神的に落ち着き、安心を感じるということも思われていました。つまり、黒いインテリアで本当に満たしたかったのは「自信」や「安心」だったのです。

要望を叶えてはいけない?
では、黒いインテリアで自信や安心が満たされるかというと、そうではありません。その答えを得るためには、人の心理や行動、脳や体についての知識が必要です。
誰しも、周りの人から評価を得るよりも、家族との温かいコミュニケーションや家族に必要とされ、愛され、信頼されていると感じることの方が、より深い自信を得られるものです。
それに、黒という色は、心理的に人に威圧感や抑圧感、緊張、恐怖などを与え、暗い気持ちになりやすい色なので、この方が得たい「安心」とは異なるものです。
つまり、この場合の「黒いインテリア」は、欲しい「自信」を、表面的に安易に得られるとクライアントが考える手段に過ぎません。

リビングの壁を黒色にしなくても、いくらでもカッコ良いインテリアは作れます。
黒が好きなら、フロアスタンドなどに黒を使えば、色のマイナスの影響を減らしつつ、好みも反映できます。
だから、まずは「本当はどんな気持ちを満たしたいのか?を知る必要があるのです。
自分の感情を満たす部屋にすること、これが幸せに暮らせる住まいの鍵です。
つまり、知っておくべきことは下記の2つです。
1.自分のニーズ(得たい感情)
2.どんな空間・インテリアなら、望む感情を満たせるか
ニーズがわかって安心や自信を満たしたいと思っても、どうしたらその感情を空間で満たせるかについては、残念ながら一般的な建築やインテリアの学校では学びません。空間デザイン心理学®︎が、いつか建築やインテリア学科の必修科目になったら、多くの住まいで幸せに暮らせる人が増えるのになと思います。
暮らすうちに、家族仲が良くなり、どんどん活力が生まれ、自己肯定感が高まる家やインテリアがあるなら、住みたいですよね。
自信が生まれる部屋づくりのアイデア
それでは、自信が生まれる部屋作りのアイデアを少しだけお伝えしますね。
「自信」は、家族間で自然なコミュニケーションが生まれ、家族に大事にされていると感じられることで育まれます。これは住まいとしてとても大切なことです。そのためには、家具配置を整えることです。詳しくは、著書『ちょっと変えれば人生が変わる!部屋づくりの法則』(青春出版)をご参照ください。
ほかにもいくつか方法があります。
例えば、過去に頑張った時の証となるもの、たとえば何かのトロフィーや賞状、修了証などを日々見えるところに置くことも、無意識に自信をもたらしてくれます。
さらに、毎日が前向きな気持ちになるように、東側の窓のカーテンは遮光にせずに光の透過率の高いものを選ぶと良いでしょう。人は特に朝、自然光を浴びると気分が良くなり、脳が活性化し、活力が生まれるという性質を持っています。体内時計を毎日リセットしているうちに、ホルモンのバランスが整っていき、前向きな気持ちや自信につながっていきます。
さいごに
「得たい感情」は、多くの場合、自分自身が気づいていなかったり、言語化が難しかったりします。
当協会のライフデザインナビゲーターTM資格者なら、あなたのニーズを引き出して、それを叶える条件を提示してくれます。
空間デザイン心理士®︎プロ資格者なら、あなたのニーズを引き出した上で、そのニーズを叶える空間やインテリアの提案をしてくれるでしょう。
本当にあなたの幸せが叶うように住まいを整えることをしています。
自分がそれを学びたいという方は、ぜひ、講座に来てくださいね。
空間デザイン心理士®︎初級講座(通信制)はいつからでもご受講可能です。